特許の文言解釈に関する事例紹介
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特許の文言解釈に関する事例紹介

特許の文言解釈に関する事例紹介
判決番号:111年(2022年)度民専訴字第64号

 

争点:係争製品は請求項の文言範囲に含まれるか?

 

請求項1

要件A:人体頭部の自毛束に装着するヘアピースであって、ヘアリング10、複数の付け毛束12及び束ループ20を含み、
要件B:前記ヘアリング10は貫通部11を取り囲み、前記貫通部は前記自毛束30を貫通させるのに用いられ、前記ヘアリング10は複数の付け毛束12の上端を互いに編み合わせて形成されたフラットリングであり、前記貫通部11は前記フラットリング中のスリット111により構成され、前記スリット111は前記自毛束30を貫通させるために用いられ、
要件C:前記複数の付け毛束12はそれぞれ、複数の付け毛を合わせてなるものであり、前記複数の付け毛束12の上端は互いに編み合わされて前記ヘアリング10を形成し、

要件D:前記束ループ20は、前記スリット111にある前記自毛束30を締め付けるとともに、前記フラットリングの下方で係止して前記ヘアリングが下向きに滑り落ちるのを防止するのに用いられることを特徴とする、ヘアピース。

 

係争製品:

原告第11号証の画像と乙第8号証の43秒時点でのスクリーンショットによれば、係争製品のヘアリングはワイヤー及び複数の付け毛束を含み、この付け毛束の上端はそれぞれ独立しており、互いに編み合わされてはおらず、かつ、ワイヤーにより複数の付け毛束が繋がっており、前記ヘアリングは貫通部を取り囲み、前記貫通部は丸い穴によって構成され、この丸い穴は当該付け毛束を貫通させるのに用いられる。

また、原告第11号証の画像と乙第8号証の43秒時点でのスクリーンショットによれば、係争製品の複数の付け毛束はそれぞれ複数の付け毛を合わせてなり、この付け毛束の上端はそれぞれ独立しており、互いに編み合わされてはいない。

 

法院(裁判所)の見解:

(一)、ヘアリングは請求項1においてオープン表現で定義されている用語ではないので、ワイヤーなどの他の構成要素を当該文言から読み取ることはできない。

原告は、係争特許の独立請求項1における「ヘアリング」の範囲を解釈する際に、係争特許独立請求項1に記載の「複数の付け毛束の上端を互いに編み合わせて前記ヘアリングを形成し」の文言に、「複数の付け毛束の上端がワイヤーに繋がれる必要があるか否か」という限定的な内容を加え、係争特許の「ヘアリング」が「ワイヤーにより複数の付け毛束の上端を編み合わせてリングを形成する」といった実施態様を含むものではないと減縮解釈する理由はないと主張した。

しかし、係争特許請求項1の「前記ヘアリングは複数の付け毛束の上端が互いに編み合わされて形成されたフラットリングであり」という記載において、ヘアリングは複数の付け毛束の上端を互いに編み合わせて形成されたフラットリングであると明確に定義されており、請求項に記載されていない「ワイヤー」という構成要素を含むことができるようなオープン式接続用語を用いていないため、「前記ヘアリングは複数の付け毛束の上端を互いに編み合わせて形成されたフラットリングであり」という記載に「ワイヤー」などの他の構成要素が含まれると解釈することはできない。したがって、原告の主張は認められない。

(二)、係争製品の付け毛束には「編む」や「互いに結び付ける」方法は用いられていない

原告は、被告の係争製品は付け毛束の上端を「編む」過程の後、「互いに結び付ける」ことによりリングを形成したものであり、係争特許の発明における「複数の付け毛束の『上端を互いに編み合わせて形成されたリング』であるヘアリング」と何ら変わるところはないため、被告係争製品は確かに係争特許の請求項の文言解釈の範囲に含まれると主張した。

しかし、被告の特許明細書【0015】では「編む方式によりワイヤー10に複数の付け毛30をワイヤー10に取り付けた後、ワイヤー10の第1端部11及び第2端部12に近い箇所に共通の結び目13を形成する」といった内容が開示されている。これは、付け毛30をワイヤー10に取り付け、さらにワイヤー10を結んでいるのであって、付け毛30の上端は互いに編み合わされているのではなく、被告の特許の実施態様の一つに過ぎない。本件の特許侵害の比較は係争製品に基づいており、原告は乙第8号証で示された被告の係争製品については争っておらず、係争製品は付け毛束が外力を受けると自然とワイヤーから外れるため、複数の付け毛束の上端はそれぞれ独立しており、互いに編み合わされてはいない。

このことは乙第8号証により裏付けられており、係争製品は、係争特許請求項1の要件B、Cの文言から読み取れるものではないため、原告の主張には根拠がない。

智慧財産及商業法院111年度(2022年度)民専訴字第64号民事判決を参照。

 

結論

この判例は、文言侵害の部分のみを論じており、均等論の問題は論じていないようである。文言侵害の点では、両者ともヘアリングではあるが、係争特許は請求項において、複数の付け毛束を互いに編み合わせたヘアリングに直接限定しているのに対し、係争製品は複数の付け毛束をワイヤーでつなぎ合わせたヘアリングであり、両者は文言上意味が異なる。実は、係争特許が出願された際、ヘアリングについてはそれほど限定されていなかった。しかし、特許民事訴訟は無効審判を伴うことが多く。本件は無効審判請求の際、先行案件と区別するめに、ヘアリングについての定義を限定したために、係争製品が係争特許の文言解釈に含まれなくなってしまった。したがって、特許民事訴訟や無効審判請求の手続きにおいて、このようなジレンマが生じる可能性があることを踏まえ、出願の際は特許請求の範囲を慎重に検討する必要がある。

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