特許の進歩性に関する判例紹介(110,上,567)
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特許の進歩性に関する判例紹介(110,上,567)

 台湾タピオカミルクティーは世界中で人気を博し、食する人が最高の食感を体験できるようにするために、さまざまなタピオカの製造方法が絶えず改良されており、製造方法、手順、温度などのわずかな違いにより、まったく異なる食感が生まれる。特許の進歩性を判断する際、食材の製造方法は複数の特許が組み合わされていることがあり、同じ食材について類似する方法や工程から脱却するのは難しいため、先行技術と類似する内容が含まれていることはよくあるが、科学的な方法で食感を数値化して予測できない効果の有無を証明することは難しい。したがって、この種の技術は特許権で保護するのに比較的不利であるため、実務では、営業秘密の保護や生産設備に対する特許保護を組み合わせるのが一般的である。

特許の進歩性に関する判例紹介(110,上,567)

 

 

最高行政法院判決1102021)年度上字第567

争点:証拠2~5の組み合わせは係争特許が進歩性を有しないと判断するのに十分か?

係争特許の目的:

台湾特許第I472299号は冷凍即席タピオカ粒の製造方法の発明であり、その目的は大量生産可能で、製造効率が高く、タピオカ粒を容易に取り分けて迅速に解凍し、すぐに使用できる冷凍即席タピオカ粒の製造方法を提供することにある。

係争特許請求項1

澱粉、水及び食用色素を混ぜ合わせて作られた複数の生タピオカ粒を用意し、前記生タピオカ粒を沸騰したお湯で5分から20分茹でて茹でタピオカ粒を作り、前記茹でタピオカ粒を水洗いした後、水様液に浸して30分から45分蒸らし、前記茹でタピオカを0℃から10℃の氷水に入れて60分から180分冷却処理し、さらに急速冷凍ブロワーに投入し、前記急速冷凍ブロワーの−5℃から−40℃の低温風力で冷却処理済みの前記茹でタピオカ粒の一粒一粒に風を吹き付けることにより、前記茹でタピオカ粒が互いにくっつかず、一粒ずつ個別に急速冷凍される、冷凍即席タピオカ粒の製造方法。

 

証拠2

証拠2の明細書3ページから5ページでは、タピオカ粒の保存上の問題や穀物製品の製法上の問題を解決するために発明された、粉末原料加工を利用した即席食品及びその製造方法が開示されている。この方法は、タピオカミルクティー用のタピオカ粒の製造に用いることができ、蒸し煮する、長時間浸す、冷凍乾燥させるなどの工程が含まれる。このタピオカ粒の原料にはじゃがいも澱粉、キサンタンガム、乳化剤、水等が含まれ、蒸し煮や浸して蒸らす際の操作条件は60℃から200℃で5秒から20分とし、冷凍乾燥の操作時間は10秒から20分間とすることができる。

 

証拠4

証拠4の明細書11ページで開示されたタピオカ粒の製造方法は、キャッサバを原料とする粉末と水を混ぜ合わせて生タピオカ粒を作り、生タピオカ粒を10分加熱して糊化した後氷水で洗い、さらにこの加熱済みのタピオカ粒を8℃の冷蔵室で約10分間冷やす。これによりタピオカ粒に弾力とコシが生まれ、低温で保存しても硬くならず、鮮度を保つことができる。

 

原判決の趣旨:

証拠2が係争特許請求項1と異なる主な点は、①タピオカ粒の製造方法に特定の操作条件下での冷却処理を含み得ることが明確に開示されていないこと、②当該冷凍工程では加熱済みタピオカ粒が互いにくっつかず個別に急速冷凍されるが、その効果や原料の成分が若干異なること(食用色素を含むことが明確に開示されていない)、③浸して蒸らす際や冷凍する際などの操作条件(例えば、時間、温度)が若干異なることである。証拠4の11ページでは、タピオカ粒の製造方法として、係争特許請求項1の冷却処理に相当する方法が開示されており、その操作温度も重なる部分があるが、操作時間が若干異なる。証拠4の明細書10ページから12ページには、互いにくっつかず、すぐに食べられるという効果を有するタピオカ粒の製造方法が記載されている。また、証拠4の5ページには、従来のタピオカ粒の製造方法として、タピオカ粒に火が通った後、真空環境下に置き、0℃以下で急速冷凍することにより、冷凍タピオカ粒を得られることも開示されており、これは係争特許請求項1のタピオカ粒同士がくっつかないように個別に急速冷凍する工程に相当する。

 

上訴人の主張:

証拠4では、タピオカ粒の製造における冷却や急速冷凍などの操作工程を開示しているものの、この技術内容ではタピオカ粒を一粒ずつ分離された状態にすることはできない。証拠4の技術内容では、タピオカ粒を分離された状態で冷凍することを実現するために、加熱されて糊化した生地に保護溶液を均等に付着させているが、原判決では当該技術内容のこの部分が証拠として引用されていなかった。したがって、証拠2と証拠4の組み合わせは、係争特許請求項1が進歩性を有しないことを証明するに足りるものであり、特許査定の際、専利法(特許法)第22条第2項についての判断に誤りがあったと言える。

 

法院(裁判所)の決定

原判決で認定された事実によれば、証拠3では主な実施形態として、海藻ゲルとこんにゃく粉が材料に使用されているが、タピオカ粒の基本材料は農作物を粉末状にしたものを使用できることも開示されている。証拠5で開示されている食品急速冷凍システムの改良構造は、当該システムにより複数のモーターと複数のファンを組み合わせて空気の流れを均一にし、凍結エネルギーを効率的に利用することで、より短い時間かつ狭い空間で食品を凍結する効果を達成できるものである。原判決では、タピオカ粒の製造手順が他の澱粉原料からなるタピオカ粒に応用可能であることを認め、証拠5は、係争特許請求項1の「前記急速冷凍ブロワーの−5℃から−40℃の低温風力で冷却処理済みの前記茹でタピオカ粒の一粒一粒に風を吹き付けることにより、前記茹でタピオカ粒が互いにくっつかず、一粒ずつ個別に急速冷凍される」技術特徴に相当するものとし、事実認定の根拠と心証を明確に述べており、判決の理由不備のような法令違反はない。

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