スペシャルコラム
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I.争点:請求項読み込みの禁止、均等侵害、証拠提出期限超過
II.判決番号:109年(2020年)度民専訴字第96号
III.係争特許:発明特許第I558473号
VI.事例紹介
一、係争特許及び係争製品
1.請求項21
(特徴21A)振動式部品供給装置1、計量装置2、バスケット搬送装置4、部品供給テーブル5およびディップスピンコーティング装置6を少なくとも含む全自動ディップスピンコーティング機であって、
(特徴21B)部品供給テーブル5の移動ベース51とバスケットベース53の間に空気注入装置54を設け、
(特徴21C)バスケット搬送装置4の第1バスケット取り出し装置によりバスケット3を搬送してバスケットベース53上に載置すると、前記空気注入装置54が平たくなることで、移動ベース51においてバスケットがディップスピンコーティング装置6に搬入されるようになり、位置決めされた後、前記空気注入装置54は空気が注入されて膨張し、バスケットベース53およびバスケット3は上方に持ち上げられてわずかに高くなり、これによりディップスピンコーティング装置6の回転遠心装置63がバスケット3を挟持した後、前記空気注入装置から空気が排出され、バスケットの高さが低くなり、移動ベース51およびバスケットベース53はディップスピンコーティング装置6から搬出されやすくなる。
2.係争特許の図面及び係争製品
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係争特許の図面 |
係争特許の図面 |
係争製品 |
二、原告の主張:
1.係争製品は請求項21の権利範囲に含まれる
請求項21では空気注入装置の外観形状が細部まで限定されておらず、係争製品の空気圧装置と請求項21の空気注入装置は、本質的に方式が同じであり、同じ機能を果たし、同じ結果を得られる(空気注入装置の空気を注入し排出する機能を利用し、小さい高低差の間でバスケットを迅速に昇降操作する目的を達成する)。したがって、両者は均等であり、係争製品は請求項21に対して均等侵害を構成している。
三、被告の主張:
1.係争製品は請求項21の権利範囲に含まれない
請求項21の空気注入装置は、形状の大小が変化する柔軟なエアバック状の物体であるはずだが、係争製品の空気圧装置は伸縮動力装置(エアシリンダー)であり、空気を圧縮することにより装置の一部を押し動かして直線移動させる機械装置である。このことから両者は異なるといえるため、係争製品は請求項21の権利範囲に含まれない。
2.係争特許請求項21は進歩性を有しない
3.民事答弁第九状で提出した「乙証5」および「乙証5と乙証3B」の組み合わせ」により請求項21が進歩性を有しないことを証明できる。
四、判決
1.係争製品は請求項21の文言範囲に含まれない
係争製品の空気圧装置の作動状態は、請求項21の空気注入装置の平たい状態とは異なるため、係争製品は要件番号21cの文言範囲に含まれない。
2.係争製品は請求項21の均等範囲に含まれる
技術手段:係争特許は、空気注入装置が空気注入された後、平たい状態から膨張した状態になることで、バスケットを持ち上げるものであり、係争製品は空気圧装置が空気注入された後、初期状態から上昇することによりバスケットが持ち上げられた状態になるもので、両者はいずれも空気圧を利用した空気注入装置(または空気圧装置)により変化を生じさせる技術に属し、本質的に同じ技術手段を応用したものである。
機能:係争特許と係争製品はいずれも、圧力の変化を利用してバスケットベースが空気注入装置(空気圧装置)の動作に伴って動作して上昇する機能を有するため、両者の機能は完全に同じである。
結果:係争特許と係争製品は、前述の技術手段によりバスケットを上昇させるものであるため、両者から得られる結果は完全に同じである。
以上のことから、係争製品は請求項21の均等範囲に含まれる。