スペシャルコラム
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一、判決番号:112 (2023) 年度上字第602号
二、争点:新型コロナは原状回復申請の理由に成り得るか?
三、事由:趨勢投資股份有限公司は智慧財産及商業法院(知的財産及び商事裁判所)の判決に対して上訴し、発明特許の原状回復申請を求めた。
四、原告の主張
趨勢投資股份有限公司(原告)は、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、会社の収益が激減し、無給休暇を実施したことで、特許管理者が退職したため、年間特許料を期限内に納付できなかったと主張した。原告は、新型コロナの流行は天災と見なされるべきであり、台湾専利法(特許法)第17条第2項に基づき、納付に遅延があっても原状回復を申請できると指摘した。また、原告は、2日間の遅延があったものの、法に従って3倍の年金を追納したのだから、特許権の回復が認められるべきであると強調した。原告はさらに、新型コロナ禍への対応として被上訴人(台湾の知財主務官庁である智慧財産局)が公布した「回復原状辦法(原状回復弁法)」は寛大に解釈されるべきであると指摘した。
五、法院(裁判所)の見解
法院(裁判所)は本件を審理する際、専利法(特許法)に基づき、規定期間内に特許年金が納付されない場合、期間満了後6カ月以内であれば追納でき、故意の遅延でなければ、期間満了後1年以内に特許権の回復を申請できることを指摘した。本件では、原告は法定期限の2日後に年金を追納しており、その時点で特許権回復申請の法定期限を過ぎていた。法院は、新型コロナ禍であっても公的・私的業務が完全に停止したわけではなく、原告は期限内に年金を追納して特許権回復を申請する機会はあったと指摘した。法院は、原告が言及した「回復原状辦法(原状回復弁法)」について、受理手続きにおける寛大な認定を示しているに過ぎず、法律の規定を超えてその制限を免除するものではないと判断した。したがって、法院は、原告が年金の追納遅延の正当性を証明する有力な証拠を提出できておらず、上訴において原判決にどのような法令違反があるかを具体的に示していないと判断し、これにより上訴が棄却されることとなった。
2021年7月26日、台湾では新型コロナ禍の警戒レベル3が解除され、係争特許の年金を追納して特許権回復申請を行う2021年11月30日の期限まで残り約4カ月の期間があったが、上訴人は、この期間内に年金を追納して特許権回復の申請ができなかったことについて、自己の責めに帰すことのできない事由を証明する証拠を提出しておらず、単に担当者の異動により直ちに対応できなかったという主張は正当とは認められない。また、新型コロナの流行中、台湾では警戒レベル3が発令されたが、外出禁止や通勤・登校の停止は行われなかったため、被上訴人においてはその期間も通常どおりの出勤で各種業務が行われていた。仮に新型コロナ禍が天災事由であったとしても、新型コロナ禍の期間中も公務・私事が停止されなかったため、法に定められた、天災により自由を喪失し、代理を委任できない又はその他の方法により遅延を回避することができない状況には該当しない。
六、結論:
台湾では、法定期限を過ぎた場合、申請者が原状回復を主張することは非常に難しく、特に代理人が指定されている場合は、特別な事情(天災や人災などの不可抗力)がない限り、ほとんど成立しない。新型コロナによる隔離は、もはや原状回復申請の理由になり得ないことが本判決からも分かる。