地理的名称とは、地球上の地域の名称であり、国、県・市町村、街道等を人為的に定めた地理的区画と、海洋、河川、湖、山岳、沙漠等の自然の姿とを指し、その正式名称、略称、別称、訳語、形容詞的態様なども含まれる。
外国の地理的名称でよく見られる中国語名称には、決まった訳語に統一されていないものも多いが、消費者に認知されれば、地理的名称であると見なされる。
地図、特定地域の外形輪郭又はその他標識が、消費者にとって、特定地域の表示である場合、その識別性の審査は地理的名称と同様に行われる。
同一の名称が地理的意味及びその他の意味又は用途を有する場合、その指定商品・役務の出所と関連付けられる可能性を考慮する必要がある。
また、地理関連の名称は、それが表す主な意味が、独立した、すぐに理解できる非地理的な意味を作り出している場合には、消費者が商品・役務の出所と関連付けないことがある。
例えば、「HOLLYWOOD」という名称は、純粋に地理的な意味ではなく、エンターテインメント産業と関連付けられることが多い。
消費者が地域や位置を明確に認識できるような、ユニークな地理的特色を持つ建物や自然景観は、商品・役務の出所である場所と容易に関連付けられる。
例えば、台湾の野柳地質公園にある有名な自然景観の「女王頭」は、名称自体は地理的名称ではないが、消費者が直接その場所を連想しやすく、地理的位置を示す意味を持つ。
銀行、航空、鉄道などの特定の産業分野では、国の政策や産業特性により、地理的名称と業種名を組み合わせて商標登録出願を行うことは一般的であり、消費者は、単なる地理的名称の説明ではなく、商品・役務の出所を認識する標識と捉えることがある。
例えば、「台湾電力」、「彰化銀行」、「マレーシア航空」などの名称は、いずれも商標として登録されている。
地理的名称を含む商標の商品・役務への使用を指定した場合、通常、消費者に与える認識は、商品・役務の生産地、営業地及び役務創設地又は提供地等の説明であり、原則として識別性を有しないものとする(商標法第29条第1項第1号)。
また、商標図案に含まれる地名が、ある産業分野において著名であり、又は当該指定商品・役務の市場において著名であり、消費者の消費判断に実質的な影響を与える可能性がある場合、その名称が実態と一致しないときは、商標法第30条第1項第8号の規定が適用され、登録を受けることができない。
商標法第30条第1項第8号の、公衆の産地に対する誤認誤信を招き、登録できないような状況の有無を考慮すべきか否かの判断原則は、次のとおりである。
(1)商品・役務と産地・提供地との関連性
地理的名称が商品・役務の産地・提供地と関連付けられるほど十分に周知され、商標について指定された商品・役務が当該地域で主に提供されているもので、地理的名称が消費者の購買意欲や意思決定に影響を与える重要な要素であると認定された場合、公衆の誤認誤信を招く可能性を考慮する必要がある。
(2)商品・役務の出所を誤認誤信させる可能性
商標図案上の地理的名称や図柄と指定商品・役務の関係に偽りがある場合、その商品・役務がその出所に由来すると消費者に誤認誤信させ、購買決定に影響を与える可能性がある。
特に、商標出願の際に記載された住所(地理的な地域や位置を指す)は、必ずしも商標図案に表示された地理的名称や、実際の商品・役務の出所と直接の関連性がないことに注意する必要がある。
疑義がある場合、出願人は意見書で具体的に説明するか、指定商品・役務の適切な減縮を行う必要がある。
マーケティングパターンは、従来から知られている商品・役務から関連する商品・役務へと派生・拡大することがあるため、消費者が当該地域を連想する可能性を考慮すべきである。
例えば、「阿里山」地域は、お茶、わさびなどの生産地として知られている。「阿里山」の名称が含まれる商標について、茶葉、農産物やそれらと組み合わせることの多い飲料、食品を提供する飲食店などを指定商品・役務にすると、消費者はその商品・役務の出所が「阿里山」地域に関連すると考えやすい。
商標が地理的名称を含む場合、消費者は通常、当該商品・役務の地理的位置を示すだけもの、商品・役務の産地・提供地を説明するだけのものとして認識する。
審査では、当該地域の自然環境、産業の規模及び産業・商業活動が指定商品・役務の特性に関連するか否かを考慮し、ケースバイケースで判断されるべきである。
消費者に親しまれている地理的名称は、たとえ特定商品の生産又は特定役務の提供によって周知されたわけではなくとも、消費者にとっては依然として地理的位置を示すものに過ぎず、そのような名称を商品・役務に使用しても、消費者は、通常、商品・役務と当該地理的地域の関連を説明し、商品・役務の産地・提供地を示すものという印象を持つだけなので、出所を識別する標識ではない。
▼登録拒絶事例:
「花東」:米商品に使用。花東地域は有名な米の産地であり、消費者が米商品の出所が当該地域であると連想する可能性があり、指定された米商品の産地が確かに当該地域であるため、該商標は産地の説明だと見なされる。
「MILANO 米蘭」:バッグや財布などの商品に使用。ミラノは観光、ファッション、建築物などで有名なイタリアの都市名であり、消費者には地理的名称として周知されているため、当該商標は出所の説明となり、識別性を有しない(商標法第29条第1項第1号)。もし、指定商品の出所がミラノではないが、ファッションに関する印象を与える場合、消費者の購入判断に影響する可能性があり、誤認誤信を生じさせるおそれがあるため、登録が許可されなかった(商標法第30条第1項第8号)。
地理的名称が指定商品・役務との間に何ら関連がなく、かつ消費者がその名称を、商品・役務の産地・提供地であること、又は商品・役務が当該地域と関係があることを示す説明であると考えない場合、地理的名称の恣意的な使用に該当し、識別性を有する。
なお、遊園地の「六福村」、レジャーファームの「清境農場」、ショッピングモールの「義大世界購物廣場」のようなレジャー施設や複合商業施設などの名称は、出願者が独自に考えた名称であり、出願者自身が提供するサービスの出所を示し、識別性を有する。
▼核准案例登録事例:
「玉山」:銀行の役務に使用。玉山は台湾最高峰の山脈であり、消費者の認識において、当該地域は銀行役務と何の関係もなく、両者の間に連想は生じないため、地理名称の恣意的な使用に該当し、識別性を有する。
旧地名が久しく使用されず地理的出所を表示する作用を喪失している場合、消費者は、それが商品・役務の出所であるとは連想しないため、識別性を有する。
ただし、Ceylon(セイロン、スリランカSriLankaの旧称)やLeningrad(レニングラード、サンクトペテルブル グSaint Petersburgの旧称)のように、改名された後も引き続き使用され、又は依然として周知されている旧地名の地理的名称は、消費者にとっては依然として地理的出所を表示する機能を備えており、 その識別性の審査は一般的な地理的名称と同様である。
なお、消費者にとって地理的名称の意味を持たない珍しい地名は、地理的出所を表示する機能がないため、識別性を有するものとする。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
地理名称とその他文字の組み合わせは、斬新で単一的印象を与え、商品・役務が当該地域と関係があることを示す説明であるという意味からかけ離れている場合、識別性を有する。
ただし、当該文字の組み合わせの全体的な意味が、依然として商品・役務に関連する記述である場合は、識別性を有しない。
例えば、地理的名称と、本舗、山荘、部などの場所の名称、「大、小、真、老、新」などの形容詞的態様を加えたパターン、又はその他の識別性を有しない文字や図形との組み合わせは、地理的位置の説明的意味から切り離すことはできない。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
国名は国家主権の象徴であり、その国の完全な正式名称、略称、略号、訳語が含まれる。
商標の一部として国名を使用する場合、通常、商品・役務の原産国又はその地理的位置を表すものとして、記述的な地理的名称と同様の審査原則が適用される。
国名と他の文字の組み合わせが、国名の説明的意味から離れた斬新な単一的印象を与えるものであれば、識別性を有するものとする。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
人々によく知られる地理的図形又は特定の地域の外形は、特定の地域や地理的位置を表すものとして消費者に認識され、記述的な地理的名称と同じ審査原則が適用される。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
地理名称又は地理的出所を示す標識として出願し、かつ関連要件を満たしている場合、産地証明標章又は産地団体商標を登録することができる。登録出願の要件及び審査については、当局が制定した「証明標章、団体商標及び団体標章審査基準」を適用する。