周知の書籍、物語、ドラマ、映画、音楽等の作品名は、消費者にとって、単に特定の著作物の内容を示すものであり、例えば、第9類のレコード、ビデオテープ、第16類の書籍、第28類の玩具等の商品や、第35類の書籍、ビデオテープの小売り、第38類のテレビ放送、ラジオ放送、第41類の番組、映画、音楽CDの製作販売、書籍類の出版販売等の役務について使用された場合、消費者はそれが商品・役務の内容の説明であると認識しやすいため、通常は識別性を有しない。
「例えば、「白蛇伝」、「西遊記」、「ジェーン・エア」等は、周知の物語の名称であり、舞台劇、映画、テレビ番組、映画、ビデオディスク等の商品に使用される。
「きよしこの夜」、「ベートーヴェンの交響曲第5番」等は、周知の歌曲、音楽作品であり、レコードや録音テープ等の商品に使用される。これらの作品名は内容と共に人々の心に残っているため、前述の商品・役務で使用されると、消費者は直接的に特定の作品の内容を連想し、関連する商品・役務の内容の説明と見なすため、識別性を有しない。
広く知られた小説や物語は、しばしばゲームの内容として改作されることがあり、これらの名称を商標として、例えば、第9類のゲーム用のカートリッジ、ディスク、第28類の玩具の商品や、第41類のオンラインゲーム、第42類のコンピュータープログラムの設計等の役務に使用される場合、消費者に与える印象は商品・役務の内容に関する説明であるため、識別性を有しない。
▼登録拒絶事例:
人気の書籍、映画、ドラマ等の作品は、広まるにつれて周知されるようになり、特に人気の書籍、ドラマが映画として改編され、興行成績が良い映画は各種関連グッズが販売されることはよくある。
作品の名称が、多く使用され、著名であり、消費者に鮮明な印象を残し、出所を表示する機能を有する場合は、識別性を有するため、商標として登録出願できる。商標権所有者ではない者、又は商標権所有者の同意を得ていない者が商標の登録出願を行った場合、消費者に出所を混同させたり、その識別性を損なったりする可能性があるため、登録することができない(商標法第30条第1項第11号)。
▼登録拒絶事例:
一般的な書籍、雑誌、映画、テレビ番組等の内容を説明する文字を商標として商品に指定使用する場合、消費者には内容の説明という印象を与え、他の作者も同一又は類似する説明文字を書籍名や雑誌名に使用する必要があるため、一人に登録させるのは好ましくない。
▼登録拒絶事例:
作品名は、通常、特定の作品を示すのに用いられ、特定のビジネスの出所の示すのに用いられるのではない。
例えば、書籍名は特定の文学作品を示すのに用いられるが、消費者はそれを特定のビジネスの出所と結びつけることはなく、原則として、出所を表示する識別性は有しない。
出願人は作品名を書籍に使用する商標として登録出願することがある。
この場合、審査時に商標の使用方式を知ることはできないため、登録を許可されても、登録後に商標権者がそれを作品名として使用するだけの場合、商標の使用には該当しない。
雑誌、新聞等の定期刊行物や漫画、テレビドラマ等、同じ名称で発表される一連の作品は、個々の作品内容は異なるが、消費者は同一名称により同一の出所である個別作品だと識別することができるため、原則として、識別性を有する。
例えば、「老夫子」という漫画は、同じキャラクターを使用したシリーズが出版されているが、各巻は独立した完全な作品であり、消費者はその書籍名によってそのシリーズの出所を識別することができるので、識別性を有する。
書籍名がメイン、サブの二つ以上のタイトルを有し、表題の一つがすでにシリーズ作品に使用されているとともに、完全に書籍名から切り離されて単独の商業的イメージを形成し、かつ当該タイトルがシリーズ作品の標識として広められることにより、消費者が当該タイトルをシリーズ作品の標識として認識している場合、識別性を有する。
例えば、「ハリー・ポッ ター」シリーズは全7巻あるが、各巻の表紙はいずれも「ハリー・ポッター」の部分にメインタイトルとして特殊なデザインが施され、当該シリーズ作品の共通タイトルとして広まり、消費者にとってはすでに当該シリーズの識別標識となっているため、識別性を有する。