スペシャルコラム
Home > スペシャルコラム
【事例】
「台北金融大樓」(台北101ビル)の紙模型、立体パズルを中国から輸入した玩具卸売業者が、台北101ビルの商標権を侵害したとして提訴された。台北101ビルの権利者である台北金融大樓股份有限公司は、「台北101はすでに立体商標として商標登録されているので、商業広告やドラマの撮影に台北101の外観を利用する場合、権利者の許諾を得て市場価格に基づいた使用料を支払うべきである」と主張している。
一、商標権について
1、商標権侵害:
第三者が「台北101ビル」の商標権者の同意を得ずに、登録されている物と同一または類似する商品を製造・販売すると、商標権の侵害になる可能性がある。たとえば、不動産会社が台北101ビルを背景にした広告を用いて宣伝を行うとする。もし、不動産会社が意図的に台北101ビルの立体図を自社の商標として使用し、また客観的に台北金融大樓股份有限公司が販売している物件であると消費者に誤認させる恐れがある場合、商標権の侵害になる可能性がある。また、台北101ビルの写真が掲載されたハガキや、小型の置物やアクセサリー類(例:キーホルダー、名刺スタンド、ガラス製小物等)で中に台北101ビルの立体態様を含む商品が、消費者に商品の出所、販売、許諾、提携等の関係を誤認させる恐れがある場合も、商標権の侵害になる可能性がある。
2、合理的使用:
台湾商標法第36条第1項第1号によれば、商業取引の慣習に符合する誠実かつ信用できる方法で、自己の氏名、名称またはその商品または役務自体に関する説明を表示する場合、合理的な使用方法に該当し、他人の商標権の効力による拘束を受けない。このような使用は、他人の商標を利用して商品または役務の出所を示すという方法にはあたらず、商標の使用態様と使用方法が異なるので、商標権者が他人の使用を排除する権利範囲には属さない。
台北101ビルを背景として不動産会社の広告に掲載することや台北101ビルを写真にとってハガキにすること、あるいは、小型の置物やアクセサリー(例:キーホルダー、名刺スタンド、ガラス製小物など)の中に台北101ビルの立体態様を含むことに関しては、業者が単にそれを背景として、または工事中の建物の近隣にある著名建築物としてポスター掲載するのであれば、それは消費者に建物の位置および周辺環境の機能性、または風景の建設や場所を説明するためであり、他人の商標を利用して商品または役務の出所を示すために商標を利用するわけではないので、合理的な使用方法に該当すると主張できる。しかし、具体的なケースについては司法機関がさまざまな主観的、客観的証拠資料に基づいて商標権の侵害か否かの判断を下すことになる。
二、著作権について
建築物は著作権法により保護されるため、著作権者の同意または許可を受けないと、以下の場合は利用することができない。
(一)建築により建築物を複製する場合。
(二)彫刻により彫刻物を複製する場合。
(三)公衆に開放されている屋外場において長期展示の目的のために複製する場合。
(四)専ら美術著作の複製物を販売する目的のために複製する場合。
著作権法第58条によれば、上記四つの場合以外は、「合理的使用」に該当する。
したがって、著名建築物(台北101ビルを含む)を記念品にすることや、写真に撮って、ハガキ、ペーパーアートまたはポスターにすること、およびドラマの撮影に利用したり背景にすることなどは、いずれも前述の四つの場合以外の「合理的使用」に該当し、著作権法違反とは見なされず、著作権侵害の問題も生じない。
現在、台北金融大樓股份有限公司による「台北101」関連の商標出願数は200件余りに達しているため、「台北101」に関連する商標を使用する際は十分な注意が必要である。
(智慧財產局中華民國103 年12 月18 日號函參照)