商品・役務の出所を表示して区別する標識として用いられた文字が識別性を有するか否かは、文字の意味及びその文字と指定商品・役務との関係によって決まる。
文字に商品・役務の品質、機能又はその他特性を説明する意味が完全に含まれない、又は商品・役務に関する直接的な説明表現でない場合、識別性の強い文字商標となる。
▼登録事例:
商品・役務の通用名称や、その品質、機能又はその他特性を直接的に説明する文字であっても、商品・役務自体の特性や通用名称等を示すだけという本来の意味から離れた、斬新なデザインの文字である場合は、識別性を有するものとする。
ただし、審査において、元の文字から商標権の範囲に疑義が生じるおそれがあると判断された場合、専用としない(当該部分について商標権を主張しない)旨を声明しなければならない(商標法第29条第3項)。
▼登録事例:
説明的な文字の商標は、文字に色付けしたり、簡単な装飾を加えたり、よくあるフォントや文字サイズの変化などでデザイン性を持たせたりしても、消費者に与える印象が文字の意味にとどまる場合は、同業者の公平な使用を阻害するおそれもあるため、識別性を有しないものとし、また、その部分について専用しない旨を声明しても登録を受けることはできない。
▼登録拒絶事例:
開発メーカーが市場における新開発の製品又は役務に付与する名称は、オリジナルであっても、もし商品・役務の直接的で明らかな説明であり、他の同業者もこの明らかで直接的な説明的表現を使用する必要がある場合、一人に排他的専属権を取得させることは好ましくない。
したがって、出願人によるオリジナルだとしても、依然として商品・役務の関連説明であると認められ、識別性を有しないものとされる。例えば、「phototransport」は「写真転送」を意味し、コンピューター内の画像ファイルをカメラに転送して閲覧する新しい技術を明らかで直接的に表現しているが、その他の同業者が画像転送に関する商品への使用を必要とする可能性もあるので、依然として商品の説明と考えられるべきであり、識別性を有しないものとする。
文字の意味が商品・役務の説明である場合、たとえ同業者が同一文字を商品・役務の説明として使用していなくても、それが商品・役務の説明であるという本質を変えることはできないため、当該文字が識別性を有する証拠とすることはできない。
例えば、化粧品業界では、「潤活極緻」(濃密な潤い)や「晶緻煥白」(ブライトニングホワイト)等の言葉を用いて商品の成分や効果を強調することがあるが、同じ言葉を用いる同業者がいなくても、これらの表現は商品の直接的な説明であり、消費者が商品の出所を識別する標識ではないので、識別性を有しない。
同音異義語が、消費者に対して目新しく独特な印象を与えることにより、元の説明的な意味以外に商品・役務の出所を区別する機能を生じさせる場合は、識別性を有するものとする。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
国民が熟知する民族言語・地方言語によって構成される商標の識 別性の審査においては、まず当該言語自体の意味を理解し、その意味と商品・役務との関連性に基づいて判断する。消費者が依然として商品・役務の通用名称又はその関連説明であると認識する場合、又はその他識別性を有しない状況がある場合は、登録が拒絶される。
地域・民族の伝統的な言語の綴りの代わりに中国語文字を用いたり、同音異義語や一般的でない言葉で民族言語や地方言語を表現したりし、かつ、同業者が一般的に指定商品・役務を説明するのに用いる言葉でない場合、暗示的標識に属し、先天的識別性を有するものとする。しかし、当該同音異義語が同業者の間で慣習的に商品・役務の特性の説明に用いられている場合、記述的標識に属し、識別性を有しないものとする。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
外国語の文字の意味が指定商品・役務の通用名称又は関連説明である場合、識別性を有しないものとする。商標の図案が外国語の文字で構成される場合、又は外国語の文字を含む場合、出願人は願書の商標図案分析欄に言語の種類及びその中国語の意味を記載しなければならない。
国民が熟知している英語のような言語の場合、それが商品・役務の通用名称又は関連説明であるか否かは、審査時に容易に判断できる。国民が熟知しない言語の場合、たとえ審査時にそれが商品・役務の通用名称又は関連説明であることが発見されず、登録が認められても、外国語の文字が前述の登録を許可しない事由に該当する場合は、異議申し立てや無効審判請求により、その商標登録が取り消される可能性がある。
▼登録拒絶事例:
一般消費者の外国語に対する精通度はその言語を母国語とする者とは異なり、使用される外国語が一般消費者の理解を超えていることはよくあるため、外国語文字やそれを組み合わせた文字の識別性は、消費者の理解度に基づいて判断される。
外国語の文字自体やそれを組み合わせた後の意味が指定商品・役務において、同業者の間で慣用的に用いられる用語でない場合、又は創作用語である場合、消費者にとっては商品・役務の説明的表現にはならないので、識別性を有するものとする。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
2つの説明的な文字・単語を1つに合わせた語句が識別性を有するか否かは、その形成された語句全体を考慮する必要がある。
2つの文字・単語を合わせたり間に符号を入れて連結したりして形成された複合的な語句が、個々の文字・単語の説明的意味を離れており、商品・役務の説明であるという元の印象とは異なる印象を消費者に与え、出所を区別するのに十分であれば、識別性を有するものとする。
逆に、2つの説明的文字・単語を単純に組み合わせただけで、組み合わせてできた語句の意味に特別な変化はなく、依然として説明的な印象を与え、同業者も商品・役務の説明に使用する可能性が高い語句は、識別性を有しないものとする。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
外国語の文字・単語が複数の意味を持つ場合、そのうちのいずれかが商品・役務の説明又は通用名称であれば、識別性を有しないものとする。例えば、「Cell」には細胞、独房、蜂の巣穴、電池、携帯電話等の意味があり、電池の商品へ使用が指定された場合は、指定商品の通用名称であり、識別性を有しない。
外国語の文字・単語が指定商品・役務の通用名称又は関連説明の誤った綴りである場合、消費者に与える印象が依然として正確な文字の通用名称又は説明の意味と同じであれば、その誤った綴りは識別性を有しないものとする。
例えば、「MILLENIUM」と「MILENNIUM」はいずれもMILLENNIUM(千年紀)の誤った綴りであるが、シャンペンやブランデー等の商品に使用された場合、「MILLENNIUM」(西暦2000年)を連想させ、商品の年数の説明になる。
また、説明的な用語を慣用的な綴りに置き換えて表す場合も、識別性を有しないものとする。
例えば「E」は習慣的に「ELECTRONIC」(電子の)を簡略化した文字であり、電子技術を含む又はオンラインで提供される商品・役務を表示するのによく使用される。
このような文字を組み合わせた商標は、全体的な意味が商品・役務の説明を含んでいれば、識別性を有しないものとする。
例えば、「e-book」は電子書籍のような商品に使用され、商品の説明的意味を含むため、識別性を有しない。
商取引において、品質のレベル、商品のサイズ、当該業界や技術分野で使用されるコード、モデル番号、その他の記述的標識などの、商品・役務自体に関する情報を伝えるために使用されるアルファベットは、識別性を有しないものとする。
審査において、アルファベットの表現形態や組み合わせ態様に基づく判断が行われ、商品・役務自体の説明や通用名称でない場合、又は商標としての機能を持つ場合、原則として識別性を有するものとする。
デザインが施されていない単一アルファベットは、商業的な使用習慣によっては、何らかのコード中に見られるか、特定の説明的意味を有する標識であることが多い。
例えば、「A」は高い品質を表す文字としてさまざまな商品に幅広く用いられ、「S」、「M」、「L」、「F」は衣類のサイズを表すのに用いられ、「C」はコンピューターソフトウェアのプログラミング言語を表す文字として用いられる。
特殊なデザインが施されている場合や、その他の識別性を有する図案や文字と組み合わせ、全体が出所を表示して区別するものであれば、識別性を有するものとする。
▼登録拒絶事例:
▼登録事例:
2つ以上のアルファベットで構成される標識は、指定商品・役務の関連説明又は通用名称でなければ、原則として、識別性を有するものとして、登録が許可される。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
アルファベットを綴った文字を使用する外国語では、特定の名称や語句を省略した綴りの略称で表現することが多い。
例えば、企業名や新興の商品・役務などを表す略称が、当該業界で使用される通用名称又は品質や機能などの特性を表す略称であれば、識別性を有しないものとする。
ただし、その略称が当該業者によって創作されたものであり、その業界で共通に使用する必要がない場合は、識別性を有すると認められる。
▼登録事例:
▼登録拒絶事例:
アルファベットと数字の組み合わせが商品・役務の規格、型番又はその他の説明である印象を消費者に与えることがある。
例えば、「512MB」はメモリーカードに使用されるメモリーの容量を示すものであり、識別性を有しない。
しかし、アルファベットと数字の組み合わせが、例えば、日本のアイドルグループ「AKB48」のように、商品・役務の規格、型番又は関連説明でない場合は、識別性を有するものとする。
審査において識別性の有無を判断するために、商標の使用態様や同業者の使用状況を説明するよう、出願人に求めることができる。
また、消費者が商品を購入したり、サービスを受けたりする際、通常は異なるシリーズの製品を区別するための型番やその業界において共同で策定された標準フォーマットの名称に注目する。例えば、「MP4」は動画ファイルのフォーマットであり、出所を識別する機能はないので、先天的識別性を有しない。
▼登録事例:
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