識別性の審査――数字
単純な数字は商標登録の範囲から除外されるものではないが、一般的な商慣習において、例えば、商品の製造日(2022.01.01)、サイズ(24 は靴に、185/65 はタイヤに用いられる)、アルコ―ル度数(3.5、58)等の表示のように、数字はさまざまな商業分野で用いられ、このような数字は、通常一般消費者に出所を表示して区別する標識として見なされないため、識別性を有しないものとする。
ただし、中国語の文字で表現された数字の識別性審査においては、文字審査の原則が適用される。数字にデザインが施されたものや、指定商品・役務自体又はその品質、機能、その他の特性を案じするような意味を含むだけで、出所を表示して区別する機能を有する場合、識別性を有するものとする。
▼登録事例:
-
「」:コンビニエンスストアの役務に使用。同業者が慣用する数字や、役務自体と密接に関連する数字ではないため、識別性を有する。
▼登録拒絶事例:
-
「」:ガソリンスタンドの役務に使用。「95」はガソリンのオクタン価を示す数字であり、指定役務内容に関する説明に該当するため、識別性を有しない。
一つの数字又は数字の羅列
ここにおける一つの数字とは、ビジネス情報において常用されている0~9のアラビア数字を指し、デザインが施されていない状態では、一般消費者は出所を表示して区別する標識として見なさないため、識別性を有しないものとする。色付けや簡単なデザインが施されたものであっても、図案全体が商品・役務に関連する数字である場合は、識別性を有しないものとする。
▼登録拒絶事例:
-
「」:釣り竿、釣り糸の商品に使用。一つの数字を丸枠で囲んだ構成の図案であり、商品のサイズ番号又は釣り具業者が常用する整理番号であり、商品・役務の出所を識別できる標識ではないため、識別性を有しない。
▼登録事例:
-
「」:乳液、化粧水の商品に使用。「3」と「B」を組み合わせたデザインであり、単に商品に関する番号を示したものではないため、識別性を有する。
また、数字の羅列による標識は、カード番号やバーコードなどにみられるが、コンピューターによりランダムに構成された番号であることが多く、消費者にとっては記憶し難く、商品・役務の出所を表示して区別する機能は持たないため、識別性を有しないものとする。
ただし、図案化され、商業的に単一の印象を形成している場合、識別性を有するものとする。
▼登録拒絶事例:
-
「」:シャツ、ズボンの商品に使用。この数字の羅列は、消費者に単なる商品に関連するシリアルナンバーであるという印象を与え、出所を識別する標識ではないため、識別性を有しない。
▼登録事例:
-
「」:金属加工機械、電動ハンドツールに使用。図案全体は「0」と「1」の羅列で構成されているが、この配列全体が一つの商業的印象を与えるため、識別性を有する。
数字と同音異義語
数字に同じ読み方の同音異義語がある場合、消費者に斬新な印象を与えたり、一つの表現に複数の意味が含まれていたり、指定商品・役務に関する説明とは関係がない場合、隠喩により関連する特性を暗示する標識に当たり、識別性を有するものとする。
しかし、「484」(中国語の「是不是」と似た発音)のようなすでに広く使われている数字を用いた表現方法や、縁起が良い数字とされる8を用いた「888」のように一般的に好まれる数字である場合、識別性を有しないものとする。
▼登録事例:
-
「」:シャンプーなどのヘアケア商品に使用。数字の発音が「烏溜溜(黒くて滑らか)」という言葉に似ているため、洗髪後に髪が黒くて滑らかになるという特性を暗示した標識であり、識別性を有する。
▼登録拒絶事例:
-
「」:この数字は電話番号における台湾の国番号であり、発音が「拜拜囉(バイバイ)」という言葉に近いことから、消費者の間ではネット上でよく使用される別れの挨拶として認知されているため、識別性を有しない。
数字を含む数式
「+」の符号(例:「3+1」インテリアデザインに使用)や「%」の符号(例:「2%」衣類に使用)のように、数字に数学の符号や数式を組み合わせた標識はよく見られるが、指定商品・役務の特性に関する説明でなく、出所を表示して区別する機能を有する場合、識別性を有するものとする。
▼登録事例:
-
「」:化粧品の商品に使用。10の7乗という表示は指定商品・役務の特性に関する説明ではないため、識別性を有する。
▼登録拒絶事例:
-
「」:石鹸の商品に使用。72%は石鹸に含まれる油分の最適な割合であり、商品の成分特性に関する説明に過ぎないため、識別性を有しない。
数字と文字の組み合わせ
数字と文字を組み合わせた標識が出所を識別する識別性があるか否かの判断については、数字の図案におけるレイアウトや全体的な表現方法から見て、数字と文字の組み合わせが一体と見なされ、かつ指定商品・役務に関する説明ではなく、同業者が一般的に使用するものでもない場合、原則として識別性を有するものとする。
このような商標の図案の数字部分が単独で識別性を有するか否かは、上記4.3.1~ 4.3.3を参考にし、数字部分について商標権の範囲に疑義が生じる可能性の有無により、当該部分について専用権放棄の声明を行うか否かを判断する(商標法第29条第3項)。
▼登録事例:
-
「」:洗濯用洗剤の商品に使用。「987先生(ミスター987)」は数字を人名のように扱った表現であり、同業者が常用するものでもないため、識別性を有する。
▼登録拒絶事例:
-
「」:靴ひも、靴用面ファスナーの商品に使用。1秒という短時間で靴が履けるという商品特性の説明に当たるので、識別性を有しない。